第一世代Vindolineの全合成

第一世代インドール合成法を使ってvincadifformineの全合成をライス大学で行ったが、東大に赴任してもっと複雑な構造を有するvindolineの全合成をやってみたくなった。丁度、三共株式会社から小林聡さんが研究生として来られたのでvindolineの合成に向けてまず光学活性なtabersonineの全合成を開始した。その後、日本新薬から研究生として来られた上田稔浩さんにも加わってもらいvindolineの全合成が完成した。しかし、このルートではvinblastineの全合成は遥か彼方の目標で、catharanthineの全合成で開発した第二世代インドール合成法の出現で高効率的なvindolineとそれに連なるvinblastineの全合成を成し遂げることができた。

“An Efficient Total Synthesis of (–)-Vindoline,” S. Kobayashi, T. Ueda, and T. Fukuyama,. Synlett, 883-886 (2000).

私がvindolineの全合成を企画していた1990年代中頃ではAspidosperma型のインドールアルカロイドとしてはvindolineが一番難しそうな化合物だった。フランスのCRNSのPotierとLangloisはVinblastineの合成を達成したが、vindolineとcatharanthineという天然物を出発物に使っておりvinblastineの全合成などは夢のまた夢というレベルだった。次ページのように第一世代インドール合成の出発物の合成にも他段階を要したので、vinblastineの合成時にはその点がかなり改良されたと言える。
p-Nitrophenol (1-1) を出発物として、フェノールのメシル化、ニトロ基の接触還元によるアミンへの変換、さらに無水酢酸を溶媒としてアミンのアセチル化、それに続いて硝酸を加えることでアセトアニリドのオルト位をニトロ化して (1-2) を得た。次に塩酸-メタノール中で加熱することによりアセチル基を外し、NaNO2-HClでジアゾニウム塩に変換後KIを加えるとヨウ化体 (1-3) が得られた (Sandmeyer反応)。(1-3) とアクロレイン (CH2=CHCHO) とのHeck反応で得られたアルデヒド (2-1) をNaBH4で還元し、アセチル化することで (2-2) を得た。ここでニトロ基を亜鉛還元し、得られたアミンをAc2O-HCO2H (HCO2Ac) でホルミル化して (2-3) に導いた。
(1-1) のホルムアミドを塩化ホスホリル-Pyで脱水してイソニトリル (1-2) に変換した。これをn-Bu3SnH-AIBNとともにアセトニトリル中で加熱するとインドールが形成され、反応溶液にヨウ素を加えて2-iodoindole (1-3) を得た(第一世代インドール合成法)。次にmethyl 2-tributylstannylacrylate (2-1) とStilleカップリングを行ってindolylacrylate (2-2) に変換し、アセテートを加水分解して (2-3) が得られた。
アミン誘導体 (2-5) の製法はtabersonineの全合成に用いたルートと同じであり、それをここにコピーしておく。
D-Mannitolから2段階で容易に得られるグリセルアルデヒドのアセトナイド (1-1) をRoush-正宗によるHorner-Emmons反応の改良法で (1-2) のジアステレオマー混合物を得た。(1-2) の二重結合を水添し、塩酸/EtOHでアセトナイドを除去すると、より安定な5員環ラクトンが生成し、水酸基をTBS化して (1-3) を高収率で得た。次にラクトンをDIBAL還元してラクトールに変換し、CSA-quinoline存在下ベンゼン中で加熱すると脱水してジヒドロフラン体が生成する。このTBS基をTBAFで除去して (2-1) が得られた。(2-1) は2段階でアジド (2-2) に変換し、二重結合を還元しないようにLindlar触媒を使ってアジドをアミン (2-3) に還元した。アミン (2-3) を2,4-dinitrobenzenesulfonyl chloride (2-4) と反応させてアミン部分 (2-5) が得られた。